秋田スクール プラン発表会 優秀賞は大潟村もみ殻バイオマス熱利用プロジェクトに!

  • 2015.02.03
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平成26年1月22日(木)、秋田市にぎわい交流館AUにて、まちエネ大学秋田スクール最終回「事業プラン発表会」が開催されました。最終回も進行は、地域ファシリテーターのNPO法人あきたNPOコアセンターの吉田理沙さんです。

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事業プランの発表に先立ち、審査会員3名が紹介されました。

・山口勝洋さん(サステナジー株式会社)

・吉田正陽さん(秋田銀行営業本部地域サポート部)

・佐藤貴幸さん(北都銀行地域開発部ニューフロンティアビジネス推進室)

まず、発表の順序が示され、発表時間(10分)、質問およびギフトメッセージ、審査コメント、投票といった発表会の流れを確認した後、早速ビジネスプランの発表がスタートしました。

【大潟村における籾殻を利用した地域循環と活性化(リーダー:角田伸一さん)】

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≪発表概要≫

大潟村で大量に発生する“もみがら”を熱エネルギーとして活用した地域熱エネルギー事業です。事業概要としては、籾殻買取り→固形化貯蔵→地域暖房→温泉を利用したバイナリ―発電の熱源利用→焼却灰を田畑に還元を想定している。大潟村役場や地元の農業法人などの地域ステークホルダーを集めて、将来的な事業主体となる「大潟村地域熱エネルギー事業化準備会」を組織し、事業化の検討を行います。事業資金は、もみがらを集積するカントリーエレベーターからの資本出資、市民出資、融資などにより集めたいと考えている。

≪会場から≫

Q:焼却灰は課題とされていますが、どう処理するか想定されていればお願いします。

A:富山県で研究されており、焼却灰の水溶性があがりつつあるため、ケイ酸肥料にできればと考えています。

≪審査員から≫

山口:温泉温度が40度ならバイナリー発電は利用せず、熱利用をメインにした方がよいでしょう。その際重要なのは、熱を利用する設備一つひとつの熱需要を把握する必要があります。少し古い住宅などでは床暖や温水配管などの、利用できるインフラが既にあるケースもあるので調べてみるとよいと思います。

吉田:カントリーエレベーターを巻き込めるなら“もみがら”の調達は上手くいきそうですね。ただ、出資者への配当や元本償還などの利益をどこから得るのか、採算の核となる部分が見えにくいので明確にすべきと思います。

佐藤:日本一“もみがら”が集まる地域での取り組みとして良い事業。事業収支が明確化していないのが課題。実現を期待します。

【秋田市民水車の会(リーダー:土井卓さん)】

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≪発表概要≫

再生可能エネルギーによる、街おこしや自然の恵みを感じられるような、新たな活用の可能性を秋田の繁華街である川反で実現したい。これまでの、風力発電や太陽光発電などはカタログ通りの性能を実現するもので、景観については配慮する程度であり、美観形成には至っていない。川反のイメージにある、やなぎや石垣にのなかに、自然を活かした木製水車を設置し、得られるエネルギーを市民が利用することで、人が集うにぎわいのある街づくりをめざしたい。事業計画については、地域の理解が大事であると考え、大人だけでなく、こどもも含め検討会議を進めていきたい。そのなかでは地元愛が育まれ、また技術の伝承などの効果が見込まれる。

≪会場から≫

Q:水質についてはどのように考えていますか?

A:これを機会に、みんなが気にすることで、水質が改善されていくことを期待したいと思います。秋田では雄物川のNPO法人パドラーズの取り組み例があります。

≪審査員から≫

山口:良いイメージを持ってもらうことは大事だと思います。市民参加型といっても、現実的なところはしっかり詰めた方良いでしょう。出資の比率については、例えば、半分は市民出資にするなどです。また人件費なども得られる事業にすることも重要と言えます。

吉田:個人的には好きです。活力を取り戻すのは景観だけではなく、商業ベースでの話も重要になってきます。よくみられる事例としては、そば粉があります。こういったのも組み込めればさらに発展性が見込まれます。スキームの中に、バブルを経験された団塊の世代以上の人たちを取り入れたら、ノウハウやアイディアが広がりを見せるとおもいます。

佐藤:個人的には、水車の会に入りたい。金融機関としては、難しい。寄付型のファンドなどを活用するとよいと思います。多くの人が興味をもっているので、可能性は高いと思います。

【小水力発電による循環型農業と付加価値の提供(リーダー:仙北直樹さん、代理:保科恵一さん)】

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≪発表概要≫

小水力発電と組み合わせた内水面養殖事業を考えている。子吉川の支流の鮎川には休業中の鮎の養殖業者がいるため、こちらを活用しつつ、30kw以上の水中型の小水力発電を用いて、将来的には蓄電を行い売電を安定化させていきたい。小水力発電の総事業費は1億円、養殖場で2-3000万円を想定している。私の本業は飲食業であるため、養殖した魚を真空調理や無水調理でおいしく提供したい。事業資金は、自己資金はほとんどないのですが、新たな融資を考えている。

≪会場から≫

Q:鮎以外はありますか?

A:鮭もあり、これらは、加温は必要なく、水循環に電気を使用するだけなので、経費はあまりかかりません。また、水利権者や水量は現在調査中です。

≪審査員から≫

山口:30kwで10数年で返済予定とのことで、新たな事例となって頂けたらと思います。

吉田:融資をする際には、事業の定量的な評価である財務と定性的な属性の二つをみるのですが、過去にご利用された方々については、これまでの返済能力や現地調査結果などで得られる情報から判断することになります。また、本業を生かした、地域資源からの飲食提供はぜひ応援したいと考えています。

佐藤:30kwで年間700万円の売り上げだと、返済に時間がかかりそうなので、養殖の方をうまく軌道に乗せて、地域にも雇用を生んで頂けたら良いと思います。また、調査や初期費用などは補助金など考えて、事業計画を立てて下さい。

【温泉熱水によるバイナリ―発電事業(リーダー:高橋浩さん)】

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≪発表概要≫

県内初となる、温泉熱水によるバイナリ―発電事業として、107℃の源泉を利用した100kwのバイナリ―発電を軸に、熱の多段階利用を想定している(2.5hの広大な土地があるため、多段階利用を行う際にも問題はない)。事業計画は、100kwで1億円の初期投資を5年4か月で返済予定であり、温度や湯量についての現地調査はNEDOをはじめ、多くの団体が周辺を調査しているため、文献は豊富にある。事業メンバーに地権者、メンテナンス業者がいるため、事業開始後のリスクが少ないことが強み。また、雇用の創出や観光資源として活用できることを期待している。

≪会場から≫

Q:積雪量が多いようですが、現地までの除雪は問題ないですか?

A:現状では、100m手前までは除雪されているが、事業が開始されれば、敷地手前まで行われると思います。

≪審査員から≫

山口:毎分で1tあれば良いのですが、熱水量はどの程度でしょうか?107℃を多段利用して低温30℃まで利用する場合は0.410t/分必要になると計算されます。また、温度が高い方が発電効率もあがり、有機ランキサイクルやカリーナサイクルなどシステムが異なると効率も変わるので、良いものを選択しましょう。

吉田:現状のプレゼン資料を銀行に持って行っても、審査しやすい状態といえます。地権者とメンテナンス業者がチームを組んでいる事は金融機関としても安心できる点です。

佐藤:地権者とメンテナンス業者がこの「まちエネ」で出会えたことは良かったと思います。カスケード利用を含めて、いろんな機関を巻き込んで事業化を進めていくことが良いと思います。

【雪国の夢を託すgreenpower(リーダー:大宮忠和さん)】

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≪発表概要≫

冬に食べたスイカがすごく美味しくとても感動したことから、冬の辛いイメージを、スイカを活用して変えれたらというのが動機です。事業概要は太陽光発電の1000kwを五城目にある小学校跡地に設置し、得られた売電益で県内の提携スイカ業者から通常の2倍の価格で買い取り、出資者への配当とします。初期費用は3.6億円、一口3万円の市民ファンドを想定しており、年2個のスイカを5年間配当として渡します。メンバーが出来ることは、測量や調査、メンテナンス、施工等多岐にわたることから連携して、事業を進めて行く事が出来る。

≪会場から≫

Q:暖房は必要ですか?

A:スイカは23℃で栽培出来ます。栽培コストはメロンの400円/kgにくらべ、100円/kgとコストパフォーマンスは高いです。

≪審査員から≫

山口:金額面で基盤となるメガソーラーの成功が鍵となるので、年間発電量や候補地、系統連系など収支に関わるところが、まだ詰め切れていないので、今後の課題にして下さい。スイカは事業を進めていくと黒字になりそうなので、良いと思います。太陽光を用いて、冬をスイカで楽しくというのはとても面白いことだと思いました。

吉田:電力会社の状況も変わり、買取制度などが変わりつつあります。現状、厳しい状況ですが、規模が足りているのか、場所の選定などを再考して頂きたいです。スイカ事業については、差別化戦略や付加価値、観光資源など質だけなく色々な分野からプランニングをしてみてください。また、銀行としては業者同士のマッチングも行っていますので、ぜひ活用してください。

佐藤:スイカの夢を実現するための太陽光発電ですが、ここが固まっていないのが課題です。そもそも太陽光だけでなく、他の再生可能エネルギーも視野にいれて検討してください。冬にスイカを食べさせてください。

【風力(リーダー:松浦慧さん)】

リーダー不在のため、途中までの検討内容の報告となりました。

≪発表概要≫

道路脇や自宅などの防風柵に垂直風力を付けて、融雪や非常電源に利用して、身近に風力発電を感じてもらうことで、大規模風力発電に対するイメージアップを図れたらと考えている。

以上で、全グループの発表が終わりました。まずは参加者からの投票されたのち、審査員の投票となりました。

最後に審査員の総括がありました。

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<山口>

秋田には幅広い自然資源があり、皆さんには多くの興味やチャンスがあります。ですが、まずは各論が大事です。技術や経済性などをよいスパイラルになるように組み上げて下さい。そういった、真向から正論を立てて、その上に、いろんな思いを乗せて活かしてほしい。事業が成立するときは、リーダーが事業に足りて無いところを認識していることが大事です。これから、時間がかかることもありますが、1個1個課題をクリアして欲しいです。

<吉田>

みなさんの熱意におされつつコメントさせて頂きました。事業に対して熱意をあきらめずに持ち続けるということが印象的でした。そして一人ではなく、グループだけでなく、外にも多くの出会いを持ち、成し遂げて欲しいです。

<佐藤>

どういったプランが出てくるかなと楽しみにしていましたが、みなさん素晴らしいプレゼンでした。地方銀行として、県が伸び悩んでいるのは、マイナスな事です。これから、多くの事業が実現し、経済成長につながって行く事を期待しています。これが、スタートになりますから、ぜひ熱意をもって継続してください。

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ここで、資源エネルギー庁から、啓発に関してのアドバイサーをされている金田有浩さん(マネーの虎などのプロデューサー)からも、コメントを頂きました。

昨年から「まちエネ」に携わっていますが、昨年は玉砕するグル―プも多く、売電が儲かりそうだと思ってくる人が大半でした。今年はそうではなく、自分たちが思い描くライフスタイルの実現のために、地元の資源を活用した再生可能エネルギーを用いようというのが多くみられたのが印象的でした。私自身は霞を食べるような事業を行っているのですが、継続性のある事業だから継続できるのではなく、継続していきたいという熱意やマンパワーがあるから継続していく、ということが一番なのだと思います。地域や自分たち自身がどう幸せになるかを考えていって下さい。

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そして、結果発表です。

【大潟村における籾殻を利用した地域循環と活性化】

が優秀賞となりました。

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そしていよいよ、審査員から、修了証書の授与となりました。

証書を受け取りながら、この6ヶ月をやり終えて少しホッとした表情の中に、力強くかがやくみなさんの眼差しがとても素敵でした。受講されたみなさん、お疲れ様でしたそして、修了おめでとうございました!

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最後に各リーダーから一言づつ決意表明を頂いて、まちエネ秋田スクールは無事終了となりました。

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