北海道スクール、5つの事業発表でフィナーレ

  • 2014.03.12
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まちエネ大学北海道スクール最終回では、5つのグループから事業計画書の最終発表が3月3日(月)北洋銀行さんの会場にて行われました。

北海道スクール最終事業発表会のファシリテーター・コメンテーターを務めて下さるのは、パームスプリングアドバイザリー代表で公認会計士の小泉博之さん。審査員は、NPO法人北海道グリーンファンド理事長・鈴木亨さん、全国のスクールを回って下さっているプロフェッショナル・コネクターの勝屋久さん、資源エネルギー庁からは新エネルギー対策課・課長補佐の島津裕紀さんと福地徹さんにお務めいただきました。

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「エネルギー自給・蓄電型パーソナルモビリティデザイン事業」栗田敬子さん
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<発表概要>
ベロタクシーでの経験を活用した災害時の対応までを考慮した事業計画。311の震災時には自転車が一番活躍した。全国からリサイクル自転車が集められ荷物の運搬や高齢者の移動に大変役立った。この「人力の力」からヒントを得た。パーソナルモビリティ(電動自転車)にオフグリッド発電も兼ね合わせ、動く発電蓄電池として広めたい。
北海道の電気使用量は、最少の6月と比べて最高となる1月は1.5倍にも増える。冬期間は、暖房、水道の凍結の不安、人命にかかわることもある。災害時対応も兼ねた発電と移動〜蓄電型の自転車だ。発電蓄電方法は、こぐ・あるいはパーソナルモビリティ に太陽光パネルや超小型風力を設置。オフグリッド太陽光発電で充電。電力を運び届ける機能。町づくり・町の再生を目指す。
「つかいたい、つかう、デザインする、乗りたい」がキャッチフレーズ。高齢者の外出を促す、子育ての支援(3人乗りの自転車)、デザイン会社と開発を企画。周知のためにワークショップを行い、地下歩行空間で新デザインの展示、約1万人規模の投票を集める。できあがった製品が札幌市の町づくり戦略に貢献できたらと考える。

審査員の方々からは、下記のような質疑・コメントがありました。

小泉先生)北京での6年間では自転車から車の社会へと大きく変動していたが、電気自転車もかなりの数が普及していた。電気自転車の場合は、速度50キロもでるため、交通規則の整備の必要性を感じた。この自転車についてもなにか対策が必要になるかもしれない。

鈴木さん)資金調達の方法は?クラウドファウンディングではなく、なにか方策を検討しているのか。ワークショップまでなら現在の予算でできるだろうが、その後の事業展開を考えると現実的ではない。このような事業は「人」に加えて、ほかのことと組み合わせが必要ではないか。例えば、FITなどを活用し売電をして収入を得るとか…。

勝屋さん)このアイディアはみなに身近、全国に展開できるアイディアはいい。いまの時代は、楽しいところに人が集まる。キーパーソンを集める工夫は?〜したい!と思っている人たちを、潜在的ではなく具体的な集める方策を考えよう。

経産省・島津さん)ワークショップ提案は面白い、だれがどんなメリットを求めて集まるか、そこの落としどころ。ちょっとした嬉しさがある参加型にすることが必要だ。

「森と市街地をむすぶ(木質バイオマス)」 中村和喜さん
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<発表概要>
森町は7割が森林地帯。町には製材所が6社、地熱発電、バイオマス発電、それを利用したハウス栽培も行われており再生可能エネルギーへの関心が高い。再生可能エネルギー、木育教室や里山づくりなど積極的に参画している(株)ハルキのシンボル的な存在の春木社長と鈴木氏(木育マイスターとして地域活動)たちと、森町エネルギー株式会社の立ち上げを想定。原料の継続的な調達方法は間伐材などで。FITを活用し売電、地域公共施設やハウスなどへ供給。市街地でのキノコなど高付加価値のハウス栽培を行う。熱量が軌道にのれば事業として成功できるのではないか、協議会の設立をし事業化を目指す。

成功例がまだ少ないバイオマス発電ですが、審査員の方々にはバイオマス発電の意義を踏まえた具体的な質問やエールが相次ぎました。

経産省・島津さん)売電収入とIRR値の計算はどのようにしているか。もう少し設備費を安く、原材料が安く入手できるならば発展するだろう。

鈴木さん)産業廃棄物など出口がないとうまく回らないのではないか。IRRが企画書の0.6%では事業にならない。1%くらいでないと現実的ではない。発電と売電収益、資金調達と回収期間、到達コストのバランスをもう少し詳細に検討し実現を目指そう。また、いま世の中にある仕事から、少しでも低コストで原料調達を探すことを考えよう。例えば、電力会社の送電線工事の際にでる伐採した木材を、作業員の往復時にトラックに積んで運んでもらう。すでに伐採作業員には日当が出ているので交渉の余地はあるのではないか。他の事業で資金が出ているものと組み合わせるなどの工夫があるといい。

吉迫さん)ハルキ事業アドバイザーとして4年ほど関わっている。自社の山を持っているため、チップをつくる〜森林育成、7割くらいの計算でも事業運営可能と考えている。

勝屋さん)バイオマスはハードル高いかもしれない。岡山の西粟倉では、間伐材で100年長持ちする家具をつくる工房がある。そこで働くためのIターン者も増え、町づくりにも一役かっている。町のひとたちと関わって、事業計画をつくるプロセスが大事だ。他の事業を考える際も今回のまちエネ大学で学んだことを忘れずにしてほしい。

経産省・福地さん)私はバイオマスを専門にしており、現在FITに関するほとんどすべての事例に関わっている。多方面の協力を得て、余っている、ただで手に入る、端材、などを調達できればうまくいくだろう。木材加工業の場合、そのなかから出る廃材を循環させ、グリーン発電でうまくいっている会社もある。余った材をつかう例としては、建設廃材を利用した川崎バイオマス発電所などもある。

鈴木さん)「熱」にもっと目をむけたらどうか。資金調達については、市民ファンドや現物配布、木材へ付加価値をつけて回収するなど、二次的な方法でも資金調達もできる。最近はそれらを組み合わせたファンドが人気がある。10万円のうち1万円を震災でつぶれた酒蔵支援へ、配当として復興酒を配布するなど、そのような資金調達もよいだろう。

「チーム「もうけます」小型風力発電」小坂栄成さん
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<発表概要>
すでに2月中旬に株式会社ノースエナジーとして登記をし、事業化した。北海道の事業者が北海道で電力をつくって北海道にお金をおとす小型風力発電をする。「もうけます」は事業を継続していくための意思表示。連携している3つの会社がそれぞれの利点を活かす。不動産業をしているため土地探しが得意。企業向けの太陽光発電を販売しているパートナー企業ZEROとの提携。通信端末モバイルショップのネットエイジは、投資家や資金をもっている人とつながっているため企画や営業をしやすい。まだ収益などの試算はだせない状況だが、産業用の太陽光発電と施工、土地と建物をセットにして販売する。まず現段階では太陽光発電をしながら小型風力発電へ発展させてゆく。できるだけ地域への還元を目指す。台湾製の垂直型の発電機を輸入。風が強いとおもう地域を全道くまなく回り、稚内市の岬に土地を入手した。雪が解けたら設置予定。

全国でも唯一の小型風力発電のプラン。審査員とのやり取りは、小坂さん自らの質問から始まりました。

小坂さん)FITにしても小型風力発電について制度が未熟と感じる。認証制度など買い取り価格について見通しを知りたい。

経産省・島津さん)系統連携の基準化がまだされていないので連携の際に時間がかかるため、これから業界のほうで制度を作り始める。経産省では基準ができるのを待っている状況。案件、ノウハウ、成功例失敗例を集めている。その間に制度ができるかなと期待しているところ。

鈴木さん)同じ北海道生まれの北海道育ちで「風」をやっているものとして応援したい。
地代が高いのでもっと安くしないと厳しい。縦軸型の発電機はよく把握していないが、どのくらい回るのだろうか。 日本の風に当ててどのくらいの成果があるのか。
施工やメンテナンス、検証などはメーカー負担なのか。プロトタイプをやる場合は、自分で出すお金を少なくする。施工料は小坂さん負担でよいかもしれないが、20年間の保証を得るとか、パッケージでの契約をしよう。実績がないメーカーの場合は、契約時が勝負だから交渉を大事に。

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発表の合間には、受講生の皆さん同士でエールを送り合う「ギフトメッセージ」が交換されました。

「グリーンエナジープラットフォーム創造事業」新保るみ子さん
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<発表概要>
北海道はグリーンエネルギーの宝庫だ。でも、北海道内にあるエネルギー発電所や活用場所など、一般の人は興味ある人以外はほとんど知らないだろう。NEDOがつくった新エネマップがあるが、これは補助事業のみをピックアップしており、全部を網羅していない。技術や専門的なセミナーなども業界人の参加が多いものばかりで、なかなか一般人には敷居が高い。新エネや再エネの取り組み、地域資源、雪氷冷熱を利用したみそづくりやサカナの干物づくりなどの紹介も含めて紹介するプラットフォームをつくり、そこから新たな価値の創造をしたい。
「バームクーヘン縦串理論」:ネット上のポータルサイトでは、プラットフォームをエンジンとする形で集約した情報を、魅力や付加価値をつけてビジネルモデルへと発展させる。
「太陽の市場」:人・もの・お金・情報が動いて、みなが元気にホットになる。そして町や人が活性化する。
「灯を灯す」:まちエネ大学の常設化みたいなもの、その担い手と役割を受け持ちたい。

新保さんはじめグループの皆さんの元気な発表に、審査員の方々からも応援メッセージが相次ぎました。

経産省 島津さん)プラットフォームづくりは大事だ。まちエネ大学はひとつである必要はない、全国にあっていい。場の設定があれば、お互い競争しながらやる気のある人が出現する。栗田さんのWSと融合できるだろう。

鈴木さん)なるほどなと思わせられるスピーチ。まさに「場」は必要だ。ふつうの人たちに知らせる場、共有する場は大事だ。一緒にがんばりましょう。

勝屋さん)すばらしい!いまの時代に大事なものがつまっている。加えて、「人」の情報があるといい、この地域にどんな人がいてどんなことをしているのかも知りたい。人の顔が見えるとさらに信頼でつながり、フェイスブックを越えるものになる。事業も生まれるだろう、いっしょにやりましょう。

「大人のオフグリットリトリート」中渓宏一さん
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<発表概要>
創業補助金を利用し、株式会社オフ・ザ・グリッドとして4月中に設立予定。
メインテーマはオフグリッド。パタゴニアで9ヶ月生活したことが起点、そこで生きる根源を感じた。森があれば生きてゆける、自然の恵みのなかで最低限のものがあれば生きていける。自然と共生した自分らしい生きかたライフスタイルを提案したい。
事業内容は、改造電気自動車「森かえる号」の普及。森かえる号は太陽光、生活のすべてを積んでいるため、災害時にも役立つ。一般や自治体などへ導入を広めてゆきたい。森かえる号は、改造キット&中古車購入し、改造時には教室開設して行う。
また、ドームテントの普及、発電鍋、ロケットストーブなど森の学校も併せてオフグリッドな暮らしを提案。事業パートナーは中古車買い取りや車改造の専門会社を経営しているため、森かえる号の開発と、三笠市の所有地利用で協力いただく。春からAIR-Gでラジオ番組「オフ・ザ・グリッド」開始予定。

会社設立、活動内容がスケジュール化していて、具体性のある中渓さんのプラン。審査員の方々との間では広がりのあるやり取りが繰り広げられました。

経産省 島津さん)自治体以外へも大きく発展できるだろう。
中渓さん)電気自動車は踏み込んでも50キロしか速度がでないようになど対応できるため、高齢者へも提案の可能性がある。

鈴木さん)おもしろい!収益の柱は?
中渓さん)森の学校収益で賄う。改造自動車貸し出し(1日、2日、3日間)、機器販売(ドームテント直径6m高さ4m35万など3種、改造キットなど)

勝屋さん)このような生活をしてみたいと思う人、大人の男で1人の時間がほしい世代へ、従来とはちがう別荘型の提案もできる。

経産省 島津さん)長野県飯田市にある「風の学舎(まなびや)」(http://yamabousi.net/100kazenomanabiya/100kazenomanabiya.html)も参考になるだろう。いまでは大学サークルや部活動などの学生たちを受け入れ活動をしている。
5つの事業プラン発表が終わったところで、審査員の方々から総括コメントをいただきました。

鈴木さん)初回からだんだん積み重ねブラッシュアップしてきたのがうかがえる発表だった。ただ総じて、事業をきちんと成功する前提で計画をつくるべき。今後は細かいところ、特に資金や投資についてを検討してほしい。ここでのネットワークを活かしましょう。

勝屋さん)中渓さんのプランが個人的にすごい好き、よかった。まちエネ大学に関わったみなさんそれぞれが、再エネに対して自分が向き合ったことが大事だ。事業を始めたら大変なことが多々おこる、葛藤しもがく、それは次へのステージへの切符だ。仲間が必要になったときはこの大学のつながりを活かしてください。応援しています。

経産省)
島津さん)再エネは世界的なトレンドだと思っている。アフリカには電力網がなく、オフグリッドな生活が日常的。日本から世界へどのようなクオリティのものを売ることができるのか。他国へ応用がきくものから大きな儲けを期待できる。今後は大手の参入が減ってゆくだろう、それは、みなさんへのビジネスチャンスが広がることになる。今日発表いただいたきれいで美しいビジネスプランすべてに感銘を受けた。

福地さん)第1回の際に本気で事業化したい人は5—6人ほどだったのが、今日の時点ですでに5つの事業体ができていることに驚いた。それがこのまちエネ大学が背中をおしたと思うと嬉しい。FIT買取制度を使う方は、採算性や収支がはっきりと良くなるかたちでさらに事業計画を練ってほしい。充電しつつ余った分は売りながら経営するなど、採算性をとりつつ、いざとなったら非常時に活用できると事業がしやすくなるのではないか。
オフグリッドであることとないことを結ぶことも必要かなと思う。常設にこだわる必要はなく、単発のイベントでも啓蒙も必要だ。

最後は、グループリーダーの方々を通じて、この日の出席者全員に修了証が手渡されました。
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最後に、まちエネ大学東京スクール受講生の鈴木利和さんの来札予定に合わせて、北海道スクールの札幌メンバーで集まろうという提案がありました。まちエネ大学でのつながりが全国に波及してゆくことを期待しています。皆さん、本当にお疲れ様でした。