長野スクール最終回、優秀賞は空き家対策としての再エネ活用に!

  • 2015.03.13
集合

まちエネ大学長野スクール最終回の事業プラン発表会が、2月24日に長野市生涯学習センターで行われました。

長野スクールを盛り上げてくださる立役者、地域ファシリテーターNPO法人森のライフスタイル研究所代表の竹垣英信さんが進行して下さいます。早いですね!今日で終わりですよ。寂しいですね、もう一回やりますか?(笑)今日はこのスクールの卒業でもありますが、事業プランの推進という点では今日が出発でもあります。

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はじめに、審査員のお二人からご挨拶をいただきました。

サステナジー株式会社代表取締役の山口勝洋さん

「今年度の大トリの長野スクール、たくさんの事業が芽吹いていると聞いています。事前にいただいた資料からも熱意が伝わってきていて、どんなスタートダッシュを切れるかどうか楽しみ」

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八十二銀行法人部副部長兼公務担当部長の平林岳久さん

「地方銀行としての存在意義を問われている時代。再エネ・創業・起業に力を入れて、「八十二銀行が変わったぞ!」って言われるように、ますます力を入れてやっていきます。今日は、プレゼンテーションをとても楽しみに来ました」

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【事業プラン発表①】

信濃町バイオガスコミュニティ事業(分散型小型メタンガス発電の実現に向けて)

河西さん・岩間さん

生ごみをメタンガス化、再エネ発電を目指す。信濃町ならではの地場産業や学校給食での残さで定量・質の良い生ごみを確保、小型バイオガス発電システムを導入。電気および発電残さ(堆肥化)は農家に還元、地域内での循環を促す。利用組合を設立、初期投資は自己資金と会員投資で1/3、銀行借り入れで2/3を予定。今後「信濃町自然エネルギーを考える会」との協力体制も構築していく。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

これまで全国を回ってきた経験からいくと、小規模から中規模へ格上げすると経済性がでる。小規模×件数でまとめるという手もある。おひさまファンドも50件分をまとめて企画した。規模が大きくなるほど事業的に採算性が見込めて、スタートのハードルも下がるはず。

○平林さん

ごみを集めるシェアが高いので、S社との合意形成がキモになりそうな気がします。また、行政との協力も大事にしてください。これは事業展開に不可欠になると思います。

以前、計画を見せていただいた時には1億円事業だったのが、規模縮小になったのか?⇒―生ごみの集められる量にあわせ、規模修正した。

銀行としては、借入率が高いのが気になります。たとえ利率が低くても、返さなくてはいけないお金。行政などからの補助金などを検討してみてはどうでしょう。少しでも借り入れのウェイトを下げることが運営を楽にすると思います。

 

【事業プラン発表②】

信州バイオマスタウン計画 ペレット活用で地域の仕事作りグループ

久保田さん

温暖化対策のために、化石燃料を制限、CO2排出抑制を目指す。そのために、「信州バイオマスタウン」ポータルサイトを運営。薪・ペレットストーブ利用者、ストーブ業者、行政、燃料の配達をトータルでサポートする。それぞれのニーズをマッチングし、新しい情報を届ける。また、新たな燃料資源「紙薪」について研究、普及をしていく。バイオマスタウンサポーターズを募集、自治体とも連携し、イベント(里山体験・ストーブ料理教室)を通してバイオマス利用の付加価値を高める。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

ストーブの活用と、燃料の普及。私も昔やりたかったし、ぜひやっていいただきたい。2005年ぐらいにやった時には「薪文化」を提唱した。経済性を示していたけれど、これは容易ではない、世の中にあるもので明確なモデルを作って、ポータルで示していけると良いですね。みなさんでやってみて、成功ストーリーを出していくことが最初の一歩。薪とペレットは全く別モノ。薪燃料は、山からとってくればただなので、経済的には強みでもある。ストーブ自体はそれほど高価ではないけれど、安全性を確保した二重煙突が高価になるんですね、インテリアとしては素晴らしいのですが。初期費用の徹底的に安いものは、安全性の不安があって課題もあるが、探してみるとないことはないですね。

○平林さん

初期投資が少ないので身軽でいいですね。新会社でなく、既存の会社や団体が合同でやっていくので、細かな取り決めをしなくてはけない部分が大変。長野県が始めるエフパワープロジェクトも同じなのですが、資金も大事だけど、材の調達が大事な要素になっています。内山商店さんが入っていて、調達は問題ないのかもしれないけれど…。長期でやっていくには大事なポイントと思います。ぜひ、この事業を始めていただきたい前提で話をしています。ストーブはポータルサイトだけでなく、実物リアルに体験できる場があれば、相乗効果があると思います。それをどう見せていくのか?ほかのストーブ業者ともタイアップすることが必要かもしれません。事業目標、収支見込、詳細を見てみたい。ご相談をいただければと思います。

 

【事業プラン発表③】

わくわく♡ぬくもり熱発電~小型分散型バイナリ―熱発電~

信州LOHAS研究所 酒井さん・須坂さん

中山間地の地域産業で、森の再生!未利用材、間伐材、製材くずなどを利用した小型のバイナリ―発電を目指す。

Unit1.▶太陽熱と木質チップボイラーを利用したバイオマス発電:ISI製小型バイナリ―発電機

Unit2.▶乾燥した木質チップボイラー利用のバイオマス発電と熱利用

Unit3.▶再エネ温泉“くろひめの湯”現在のボイラーを木質チップボイラーに変更、FITを利用しながら、施設や近隣農地での電気・熱利用をしていく

当初の計画を図面に落としてみると、太陽熱を確保するのに膨大な面積が必要になることがわかった。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

いろいろと詳しく検討されているようでご苦労様でした。小型の熱源供給はドイツや世界で最先端の領域ですが、日本ではまだまだ実証実験ベースです。外で熱を作って持って来る外燃機関、2と3は内燃機関でチャンスがあると思います。日本のバイナリ―は規制が緩和された一部分だけで製品が出ているのです。100度以下では温度が取れないんですね、実際ヨーロッパでは300度以上でとっています。熱をとると発電効率が違ってきます。実例が少ないので、情報を集めてから取り組んでみると良いですね。温泉施設のコラボレーション、熱と電気両方使うのは大事だと思いますよ。

○平林さん

率直に言うと、Unit1・2・3のどれをやりたいかわからなかったのですが、小規模分散型がこれから大事になっていくのは確かだと思います。今後の日本で普及させていくためには大事な一歩で、実現していただきたい。安定調達も、地域でやるから小規模で可能だと思うんですね。温泉施設やチップ業者、個別にノウハウがあるので、アウトソーシング連携していくといいですね。事業性評価を細かくやっていらっしゃるので、実際にはまたご相談ください。

 

【事業プラン発表④】

リンゴの樹伐採します 0円~

薪癒し亭 青木さん

リンゴ果樹農家の高齢化、危険な伐採作業を無料で請け負い、その薪を都市部のユーザーへインターネット販売する。「信州リンゴの薪」ブランド、相乗効果でリンゴや農産加工品も売っていきたい。実は、昨年会社を辞め、コツコツとこの事業を開始している。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

すでにやっていらっしゃるのが素晴らしい!薪もエネルギーとして使うためには、水分調整が必要、そのあたりをどうするかが課題ですね。岩手で高値の価格で東京に販売している例があるけれども、乾燥期間を管理して品質を保証しています。薪全体としてネットワークを作って横で繋がり、盛り上げて行けば良いと思います。

○平林さん

今後さらに事業を拡大される予定なのか、現状のままブランド価値を高めて高く売っていくのか?今がその分かれ道かなと感じました。青木さんご自身が、伐採技術も薪づくりも出来るというのが強みですね。供給できるものを増やして、拡大していくと良いと思います。

 

【事業プラン発表⑤】

再エネが地域をつなぐ!「元空き家ではじまる、人とエネルギーの新たなコミュニティの『縁側』づくり 長野県朝日村での試み」

チーム空家(えねや) 新さん

住宅5軒のうち1軒が空き家の長野県。1軒が空き家、4軒が地域住民と仮定し、この空き家を拠点とした「人とエネルギー」の繋がりづくりを目的に、小さくて温かい“まちの縁側”整備を行う。メンバーが保有する元空き家を使い、モデル実験とする。暗い夜道に再エネ街灯を設置、安心安全なまちづくり。空き家をコミュニティ拠点に、薪ボイラーを導入、朝日村にない「日帰り温泉」超小規模温浴場。汎用モデルとして事業展開していく。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

非常に楽しそうなプロジェクトという印象で、再エネというと経済的にまわすのばかりが表に出やすいけれど、最近はまちづくりとか、自発的にどう作っていくか、そういうスローライフ的なものがテーマになってきています。岩手県沿岸地域では、シェアハウスなどを作っていて、交流人口を増やす、交流の場になっています。地域の方ともワークショップなどを行い、Iターンしてきた人を増やす、都会からどれだけ若い人が来るかを考えています。日本全体的な社会構造として大事にするところ。すぐつながらなくても、まず最初のステップとして大事にしてほしいです。

街灯は上から照らすのではなく、歩くところだけ照らすアイディアも参考にしてみてください。一昔前は、太陽光+蓄電+LED1セット20万円だったのが0が一つ減っています。お風呂を増築するのは、断熱から含めて計画的にしてください。足元が冷えないようにする工夫を、いろんな人に関わってもらって、温熱環境の空間を、断熱より気密が先ですね。建具をきっちり作るだけでも変わる。情報を出せば、断熱リフォームをする人(東京ベース)がいます。参加することで当事者意識が芽生えて、手作りで初期費用がかかる部分をカバー、モデル的な取り組みになるでしょう。

○平林さん

興味深く聴かせてもらった。再エネだけでなく、まちづくりという観点があって新しい発想です。八十二銀行は、長野県とも組んで移住支援をしています。空き家も増えているので、空き家をリノベーションして、移住と組み合わせていけないかとも考えているところです。再エネの街灯と温浴場は、地域にあったベストミックスではないかと感じます。木曽のほうへの展開となると、地域によってやり方が違うのかもしれない。立地によって再エネのミックスの仕方を検討できると良いと思います。朝日村では、観光客をどう誘客するかを検討すれば、さらに良いプランになりそう。空き家を拠点化することでいうと、不動産業者との連携は必要だが、行政側でも空き家バンクなどを作ったりしているので、連携すると良い。もっと付加価値を出していけると思います。

 

【事業プラン発表⑥】

村の宝を掘り起こせ!ひと肌脱がせ隊「王滝モデル」~人口851人の村から始まる再エネムーブメント~ 1st.STEP 大滝の湯プロジェクト

倉橋さん 高尾さん

人口851人の限界集落、駅なし・国道なし・信号なし…ないないづくしの村だからこそ、御嶽山の麓で山と生きる森林・水源・自然とつながった暮らしがある。温泉施設「王滝の湯」を中心に、未利用材の熱利用からムーブメントを起こす。灯油ボイラーを薪ボイラーに、薪の配達システムの確立を並行して進める。人件費の削減、付加価値をつけるための工夫、薪絵馬・パワースポット・薪尾くべ太郎(ゆるキャラ)、ストーリーづくりと情報発信、SNS活用。多様な人が少しずつ「ひと肌」脱いでいく仕掛け。

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≪コメント&質疑応答≫

○山口さん

温泉は沸かし湯?鉱泉?効能で売りにしてはどうだろう。灯油から薪に変えることで、灯油業者さんはどうだろう?競合してしまわない?

―(自然エネルギー信州ネット・小田切さんコメント)実は、鬼無里でも1件しかないガソリンスタンドがつぶれてしまうかも、という不安があったけれど、そのスタンドと一緒にやっていくことにしました。配達の部分を担って社内ベンチャーというか、トータル的な燃料供給をやっていく仕組みで解決していきます。

お客さんに薪をくべてもらうのは良いアイディアだけど、安全性が心配。安全性を確保するための人の配置でコストアップになるのでは。―ワイヤーと滑り台を設置して、お客さん自身が危ないところに入らないとか、番頭さんまたはボランティアに担当してもらうのか、検討しています。木質バイオマスにぜひ変えてもらいたい。やり方はいろいろある、機器の組み方、設計、半分ぐらい置き換えるのか、今の感じだと100%置き換えも難しくないはず。熱効率データは良いのか、岐阜で海外から直接輸入している人もいるので、比較して検討をしてみてください。良い方向に進んでいます、間違いなく実現してほしい。

○平林さん

みなさん、(ひと肌脱いだ)役者さんは王滝村の人?違うのに大滝村のためにひと肌脱いだんですね、素晴らしいです。王滝村さんは、ふるさとCM大賞でも活躍されていて敬意を表します。薪の配達、倉橋さんが献身的にやる予定というのですが、長期的にリスク管理の仕組みをぜひ考えてみてください。役場とのすり合わせを、ぜひやっていってほしい。王滝の湯と役場の連携についても。事業計画、全体的にアイディア豊富で良いと思う。プロジェクト導入の動機も良くわかる。銀行借り入れはない予定のようだが、八十二銀行でもクラウドファウンディングを提携して始めているので、ぜひ連携してやらせていただきたい。

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すべてのプレゼンテーションが終了、これから投票です。それぞれのプレゼンテーションが終わった時に、さまざまなコメントを書いて、フセン紙を「メッセージギフト」として模造紙に貼っていく様子は、発表した側にも聞いた側にとっても交流の時間となり、良い雰囲気を盛り上げていました。いよいよ投票の時間です。

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そして、事務局で厳正にシールの数をカウント、「チーム空家(えねや)」が1位となりました。おめでとうございます!

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最後に、総括のコメントを特別ゲストのお二人からいただきました。

○平林さん

これまでは再エネは再エネ、という事業が多かったのですが、今日は再エネだけでなく、移住促進、空き家対策などとコラボレーションした提案で斬新、今後の参考にさせていただきたいと思います。正直、「銀行は敷居が高い」と言われてきましたけれど、創業などの部分で変わっていきたい、冒頭にも申し上げましたが「八十二銀行は変わったね!」と言っていただけるように頑張ってまいります、ぜひ一緒にやらせてください。本日はありがとうございました。

○山口さん

お疲れ様でした。これから実際に事業化するのが大変で、八十二銀行までいくのが苦労だと思います。私もおひさまファンドで飯田信用金庫と八十二銀行に5千万円ずつ出していただいた。最初は市民出資100%でやったことを考えると夢のようです。時代は追い風が吹いています、皆さん頑張ってください。

その後、表彰式と合わせてまちエネ大学長野スクール修了証の授与となりました。

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最後に、ファシリテーターの竹垣さんより「回を重ねるごとに、みなさんの顔が真剣さを増しつつも、明るく希望に満ちて輝いてきました。そして、リアリティを感じての事業プラン、ここからがスタートですね。八十二銀行さんを口説くところまで。具体的にぜひ、プランを回してもらいたいです。期待しています」というエールをいただきました。

まちエネ大学は来年度も、フォローアップ企画として2014年受講者に研修やイベント参加の機会をご用意します。引き続き、どうぞよろしくお願いします。(了)