滋賀スクール、5人のリーダーが堂々の事業発表!

  • 2014.03.07
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2月27日(木)、大津のピアザ淡海にて、滋賀スクールは最終回を迎えました。
今回は、いよいよビジネスプランの発表会。受講生の皆さんはこの日のために、自主的にミーティングを重ねたり、関係者と連絡調整をしたりして、事業プランを練り上げてこられました。

オブザーバで初めて参加の方々も多く、どんなプランが発表されるのか期待も高まる中、発表会は始まりました。
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まず事務局の木村から、今日のゲストファシリテーター、公認会計士・小泉博之さんの紹介をさせていただきました。
次は滋賀スクール名物、地域ファシリテーターの南村多津恵さん(くうのるくらすの創造舎)による恒例の”ぱーでんねん”!南村さんのリードに合わせて会場みんなで手を叩いたり、笑ったりして、場がほっと温まりました。
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ここからは小泉さんによる進行です。まず、事業プランの発表の前に、4人の審査員の皆さんから一言ずつ、ご挨拶をいただきました。

遠藤良則さん(滋賀銀行営業統括部法人推進グループ課長)
「事前にプレゼンを見せていただいたところ、かなりレベルの高いプランになっている。プレゼンが楽しみだ。」
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豊田陽介さん(気候ネットワーク主任研究員)
「今日は初めてお伺いした。どんなプランが聞けるのかとても楽しみにしている。」
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勝屋久さん(プロフェッショナルコネクター)
「採算性も大事だが、僕はみなさんの”想い”を聞きたい。」
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高木英行さん(資源エネルギー庁新エネルギー対策課 課長補佐)
「新エネルギーの目的の一つである、地域活性化という視点にも注目して拝見したい」
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さて、ここからはいよいよ、事業プランの発表です。プランを発表するのは5チーム。チームリーダーによるプレゼンテーション(10分間)の後、会場との質疑応答、審査員コメントと進んでいきます。この間、受講生の皆さんは互いのプランに対して「ここが良かった!」「こうしたらどうか」「私はこんなことを手伝える」といった“ギフトメッセージ”をポストイットに書いて、グループの皆さんの机上にある模造紙に貼付けていきました。

「地域で進める小水力発電」
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トップバッターは、市民エネルギーたかしまの山村和夫さん。高島市内の百瀬川源流域で計画中の、199kW規模の小型小水力発電の事業プランの発表です。

自分たちの想いは、足元にある水のエネルギーを活かさないのは”もったいない”という気持ちと、3.11を経て若狭にある原発の危険性を強く感じたこと、と山村さん。

プランの発表では、前回の発表後に算出し直された発電量予測や、前回の発表で水上弁護士から指摘のあった保険に係るコストの計上、キャッシュフローの算出など、採算性の精度を高めて発表されました。

今後の課題として、収益を地域の老齢化対策にどう生かしていくか、水源地域の地域住民の理解と賛同をどうやって得ていくか、といったことも挙げられました。

審査員の皆さんからは

「ぜひ実現していただきたい。できれば行政のサポートを得られるとよいと思う。住民の理解を得るという面からも、資金的なサポート面からも」(遠藤さん)

「市民による小型水力発電はまだ少ないので、ぜひ実現していただきたい。地域の理解を得るためには”説明会”ではなく”社会教育活動”として、エネルギーを身近に感じてもらえる体験型ワークショップなどをとりいれるとよいと思う。また、地域の活性化という点では、出資者への還元を農産物でしたり、母親の子育て支援をはじめとした若者の定住化促進を検討されてはどうか」(豊田さん)

「山村さんの”覚悟”を感じた。また、いろんな葛藤があることもわかった。でも、葛藤というものは、実はチャンスだと考えている。それを乗り越えることで、得られるものがある。相手にどうやったら伝わるのかを考えることが大事だと思う。目に見える価値だけでなく、目に見えない価値も」(勝屋さん)
と、具体的なアドバイスを添えたコメントをいただきました。

「青山小学校屋根貸しプロジェクト」
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2番目に登壇されたのは、ラウパッハ・スミヤ・ヨークさん。ドイツご出身の立命館大学経営学部の教授で、大学にほど近い大津市青山地区の住民でもあります。この、自らが住む青山地区の小学校に、住民出資で太陽光の市民共同発電所をつくり、地域の防災拠点や学校での環境教育に役立てようとする事業プランです。

この日はオブザーバとして、プロジェクトを一緒に進めている地域住民の方と学生さんも、参加されていました。

ラウパッハさんは冒頭、「何ら目新しいことのない、面白くないプロジェクトです。」と、自嘲気味に話されました。「あたり前のことで、世界中、日本中、どこでもやっている。お隣の京都でも、守山でも、やっている」と。
「でも、(自分が暮らす)大津でやりたいんです!地域に貢献したいんです!」と、いうラウパッハさんの言葉に込められた熱意に、会場からは思わず拍手が起こりました。

前回の発表から課題となっている、大津市の協力体制の取り付けに向けた動きの報告と、それを踏まえ、今後の活動方針やスケジュール、連携体制について、発表をされました。
会場からの「地域での環境学習というのはどういうことをしてこうとしているのか」という質問に対し「映画の上映会や、省エネや防災のワークショップ、ソーラーカーレースやミニソーラー組立ワークショップなどをやっていこうと思っている。Solar Save Seculityの3つのSをテーマに」と答えられました。

また、オブザーバで参加されていた青山地区の住民の仲間の方から「うれしかったことがある。それは、青山小学校の校長先生が”この計画には夢がある、みんなが楽しくなる”と言ってくれたこと。足元から環境のことやエネルギーのことを考えるきっかけにできると思う」との発言がありました。

審査員の皆さんからは
「県でも同様の事例があるが、賃料の折り合いと、地元の賛同の取り付けが課題であると感じている。また、20年存続するかどうかわからない市民団体に20年貸す、ということについても理解が得られにくい点があるのではないかと思う。」(遠藤さん)

「相手(市)にどう伝えるか、ということが課題だと思う。実は、同様の公的施設の屋根貸しはほかにも事例があるが、案外応募が少ない場合がある。それは”行政目線”で、いかにして賃料収入を得るか、という意識で募集をされている場合に起きやすい。環境の部署ではなく施設管理の部署がやっていると特にそうなりやすい。”賃料”ではなく”環境”のための取り組みとして位置づけてもらえるような伝え方が大切だと思う」(豊田さん)

「”啓蒙”ではなく”応援団をつくる”活動だと考えたほうがいい。私も応援団の一人です!」(勝屋さん)
とのコメントをいただきました。

「姉川上流域自立圏構想」
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次の発表者は、伊吹山スロービレッジの嶋野美知子さん。滋賀県で一番高い山、伊吹山麓の山里で、水と食料とエネルギーの自給をめざした取り組みをされています。その一環として、3kw程度のマイクロ水力発電をエネルギー源とした自立型多機能エコハウスをつくり、活用していこうとする事業プランの発表です。

これまでの流量調査の結果、水源として想定されている”桶水(おけすい)”は、流量が限られている上に、すでに農業用水や防災用水等に活用されていることもあり、固定価格買取制度を使うことができない規模の発電量であることが判明しました。

そこで、売電で事業を成り立たせるのではなく、食の取り組みと併せた農家レストラン・農家民宿や、EVトラクターやEVカーでの使用、地域コミュニティ拠点としての活用、都市住民との疎開契約、木質エネルギーの活用等、エコハウスを複合的に活用することで事業を成立させていくプランとして練り上げられました。

審査員の皆さんからは
「ぜひ実現していただきたい。地元の賛同者をどう得るかが課題だと思う。」(遠藤さん)

「夢がある。地域をどう自給していくか、という視点で構成されているのがいい。京都ではこれまで自然エネルギー学校京都という取り組みをしているので、それを参考に地域での普及活動をされると理解も広まると思う。また、バイオマスについては、地域暖房などについても考えられるといい」(豊田さん)
とのコメントがありました。

また勝屋さんからは「嶋野さんにとって、このプロジェクトはどんな意味があるのか。どうあったら、うれしいと思うのか」という本質的な問いがありました。

それに対して嶋野さんは、「5年前に夫婦で大阪から引っ越した時にこの”桶水”に惚れ込んだ。ここには水も土も木もあるし、クマタカも住んでいるし、田んぼに水を入れば100種類以上の生き物もいて、何でもある。”宝箱”だと思った。でも、地元の人は何もないと思っている。地元の人に足元にあるものの価値に気づいてもらいたい。山は本当に何でもある。山こそ豊かなんだ、ということを発信したい。そして、ここに住む人がみんな笑顔であれたらいい」と、想いを語られました。

「びわ湖ソーラーシップ構想」
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4人目の発表者は、山本克也さん。琵琶湖ならではのソーラーシップ構想です。ヨットマンであり、カヌーイストでもあり、びわ湖が大好きな山本さん。「びわ湖を楽しみ、びわ湖に集う」コミュニティシップとして、仲間でソーラーシップをつくって憩いの場にしようという構想を打ち立てられました。

なんとプレゼン自体も、参加者と一緒につくる、というコンセプトで、一枚一枚のプレゼンのタイトル(質問)を会場全員に読み上げてもらい、それに山本さんが答える、というスタイルで発表をされました。

前回の発表では、どんな船を使うのか、建造予算はどれだけか、といった課題が出されていました。これに対して山本さんは、造船業者さんとも事前に相談され、造船所の社長さんにも同席いただきながら、発表に臨まれました。

前回は中古の屋形船の上にパネルを載せるというアイディアでしたが、FRP船であれば自分たちでも作れて、コストダウンもできる、ということがわかり、FRP船での自作という構想となりました。

また、当初は不特定多数が利用する観光利用等も検討されていましたが、仲間で作るコミュニティシップというコンセプトのもと、会費制でのプランに変更されました。

現在の技術では、充電に1週間近くかかるのに対して航行時間が2時間しかない、というバランスの課題があることも明らかにされると同時に、係留中もカフェとして利用する、漁港にパネルを並べて充電できるようにするなど、さまざまな展開も検討していることを説明されました。

そして最後に「とにかく挑戦する!」と、実現への意気込みを熱く語られました。

なお、プレゼンに使われたイラストも、資金調達に関するアドバイスも、ヨットやカヌーなどで培われた人脈によって得られたもの、とのことでした。山本さんの想いと人柄が、すでに多くの人たちに伝わり、協力体制ができあがりつつあることが、如実に伝わってくるプレゼンテーションでした。

審査員の皆さんからは下記のようなコメントをいただきました。

「建造にかかるコストがやはりポイントだと思う。中古の屋形船を改造するというプランも、引き続き検討されてはどうか。エンジンとのハイブリッド利用も含めて。」(遠藤さん)

「夢があるプランだなぁと思った。面白さやバカバカしさもあって、関西らしいと思った。地域で集まる場をみんなでつくる、というのがとてもいい。手づくりすることで、コストも下げられるし一体感も生まれる。琵琶湖の魚を船で食べたりして、水の文化にも触れられたら素敵だと思う。」(豊田さん)

「素晴らしい。早く実現するための方法としては、山本さんが有名人になることだと思う(笑)。あと、地域の名士の方とつながるといいと思う」(勝屋さん)

そして、ここで勝屋さんが、思わぬコメントを発されました。
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「今まで四人の方のプレゼンを聞いてきて、山本さんの発表で、涙が出た。なぜなのかはまだ言葉にできないけれど、涙が出るプレゼンというのは滅多にない。皆さんのプレゼンに本当に感動している」と。

きっとこの勝屋さんの感動は、そのとき会場にいた皆さんが、同じものを感じていたと思います。

「市民農園で行うソーラーシェアリング」
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そして、いよいよ最後の発表者は合同会社宝塚すみれ発電所の井上保子さんです。井上さんたちは、NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会の活動から生まれた会社として、宝塚市とも協力し合いながら、すでに宝塚市内で2つの市民共同発電所を稼働されています。そして、このまちエネ大学の中で生まれた新しいアイディアがこの、市民農園でのソーラーシェアリングでした。

市が貸し出している市民農園の上に、太陽光発電キットを使って市松模様にパネルを並べ、太陽光発電と市民農園の両方を兼ねるようするという構想です(発電所の手づくりは、既設の市民共同発電所で実績を持っていらっしゃいます)。さらに、ここで採れた野菜は、地元の大学と連携して食育に生かすことも構想されています。

いつも、力の抜けた気楽な感じで語りつつ、しっかりと要点を締められる井上さん。今回も冒頭で「よくも私を最終発表者にしはりましたね」と会場を笑いに包んだあと「おかげさまで、この構想、実現しそうなんです」と、さらりとおっしゃいました。

細かい数字は挙げずに発表されましたが、それは、まだ検討できていない、ということではなく、すでに関係者との調整や、事業計画の立案等は済ませてある、ということを物語っていました。

井上さんは自らの願いを「誰も泣かない、誰も泣かせない」社会をつくっていくことだとおっしゃいました。そしてこの事業の目的は、”食”と”エネルギー”の「地消地産」を、市民の目に見えるところでやっていくことであり、市民の参加の垣根を下げることである、と。

声高に声を張り上げるのではなく、自ら動き、形にして、広く参加の入り口をつくって、市民の理解を広げ、仲間をつくっていこうとされる井上さんのスタイルに、強い説得力の感じられるプレゼンでした。

審査員の皆さんからは
「ようここまでやらはったんなぁ、と思います。本を書いたら、売れます(笑)」(遠藤さん)

「発電所は自分でつくればいい、という発想がいい。愛着がわくし、壊れたら自分たちで直せばいい、ということができるし」(豊田さん)

「井上さんも、有名人になった方がいい(笑)。アマテラスのようだ!」(勝屋さん)
といったコメントがありました。

以上5人の方からの発表を踏まえ、最後にあらためて、各審査員さんから総括をいただきました。

遠藤さん
「再エネの事業は、最終的には「収支」と「公平性」に帰結する。みなさんには、この二つを踏まえて、ぜひ事業を実現していただきたい。再エネ事業はいいことなので、銀行としても引き続き取り組んでいきたい。その際、課題があれば、私たちのような地域金融機関に相談をしていただきたい」

豊田さん
「各チームの皆さんは、よくぞこれだけの短期間の中で議論を積み重ねられ、ここまで形にされたなぁ、と感じた。再エネ事業は20年の事業。20年後、誰が続けていくのか、ということが鍵になる。だから、20年後も生きている人(若い人)を仲間にしておいていただきたい」

勝屋さん
「先ほどから、何に感動しているのかを考えているが、一つ、そうかもしれないと思ったのは、みなさんの「覚悟」かもしれない。「覚悟を決めた人」のパワーは本当にすごい。心から応援している」

高木さん
「勝屋さんとも話していたのだが、ほんとうに「すごいなぁ!」という想いに尽きる。何なのだろう、これは、と思っている。覚悟なのか、想いなのか… 皆さんは、現実とのたたかいの中にあると思う。現実というのは、今ある制度とか行政とか、保守的な、何か変化を嫌うもの。中でも役所はそれが強い。私たちも、役所の中で戦っていますので、皆さんにはぜひ再エネでうまくいっているという実例をつくり、発信をしていただきたい。本も書いていただきたい。まずはブログでもなんでもいいので、とにかく言葉にして、発信をしていただきたい。そして、再エネの伝道師になっていただきたい。
今日がゴールではなく、ここからがスタート。ソーラーシップも乗りたい(笑)。船をつくる目的の一つの「うだうだする」というのがあったも、すごくよかった(笑)。今日は本当にありがとうございました」

また、地域ファシリテーターを務めていただいた伊藤真吾さん(市民エネルギー京都)も会場に来ていただき「これまで、経産省の制度に合わせる、というよりは、皆さんが自分のやりたいことを表現していただけたらいいな、ということをお話してきた。今日の発表は、まさにそういう発表をされていて、とてもうれしかった」とのコメントをいただきました。
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そして最後は、資源エネルギー庁の高木さんから受講生のみなさんに「修了証書」の授与が行われました。みなさんの、晴れ晴れとした表情が、とても印象的でした。

受講生のみなさん、本当におつかれさまでした!そして、おめでとうございました!
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振り返れば、昨年11月6日から数えて4か月弱。互いに顔も名前も知らなかった人同士が、こうして出会い、つながりあい、5つのプランと、5つのチームができました。そして、受講生の皆さんの熱い想いと積極的な行動によって、講師のみなさん、主催者側の結束も引き出してくださいました。

こうして生まれた人の輪が、まちエネ大学滋賀スクールの、大きな成果だと思います。

5つの事業プランは今、種から芽を出したばかり。この芽を大きく育て、次なる種を蒔き、次なる芽を育てていく、という「土壌づくり」が、これからの滋賀での課題であろうと思います。

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今日はゴールではなく、スタート。

まちエネ大学滋賀スクールの歴史は、今ここから、始まります!