神奈川・横浜スクール第2回講座、事業計画づくりが本格化

  • 2014.10.14
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秋晴れの9月29日、神奈川・横浜スクール第2回講座が開かれました。

第2回は、「再エネビジネスのパイオニアが、事業計画に直接アドバイス」と題して、まず前半に再エネビジネスの先駆者に事業立ち上げ時の苦労やコツを伺った後に、後半にはグループごとに事業目的や外部環境・内部環境の強み弱みなど、事業特性を明確化させるためのディスカッションや作業を行い、講師の講評を踏まえて本格的な事業計画づくりを進めていきます。

受講生は、第1回講座の8つのグループに分かれて着席し、和やかな雰囲気のなか、14時からNPO北海道グリーンファンド鈴木亨さんによる講義でスタートしました。鈴木さんは、まさに再エネの先駆者。まだ、自然エネルギーの可能性が未知数と言われていた時期、ゼロから事業を立ち上げてきました。

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鈴木さんは2001年、日本初の市民出資による風力発電所事業を北海道で実現。これまでにも、全国で計16基の風力発電を運営し、最近では、地元企業や生活共同組合など地域の主体と連携した事業スキームの構築など、再エネの可能性を開拓すべく全国各地を奔走されています。

鈴木さんからは、現在の取組みなどの紹介後に「組織類型には様々な形態がある。理念先行の事業であっても、ガバナンスがしっかりしていないとダメ。資金調達に備えて、組織づくりはぜひしっかりと」など事業主体に関するアドバイスのほか、「風力発電については、これまでにのべ25億円、4000人近くに出資いただいた。一人当たり出資額は約60万円。これまでやってきたイメージでは、出資する人は多い人で3口は出資する傾向があるので、これを踏まえつつ、事業規模に応じて一口当たりの金額を決めるといい」など、先駆者ならではの事業化におけるコツも伝授してくれました。

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また、ファイナンスに関しては「風力発電第一号『はまかぜちゃん』については、市民出資で1億2000万円集めた。3.11を経て世の中は変わってきていると思うので、ぜひチャレンジして欲しい」「事業段階別の資金調達において、最もかかるのは初期投資と工事発注/中間/完工の段階。これは事業を始める前にすべて見越して、検討して欲しい。その上で、ファンドとプロジェクトファイナンスの現実的な構成を考えてみてほしい」など、経験に裏打ちされた具体的なアドバイスがありました。

最後に「出発点は皆さんと同じで知識も皆無だったけどここまで来られた。皆さんにもぜひ頑張って欲しい。」とエールが送られ、受講生の目も一段と輝きを増したようです。

また、質疑応答では「NPOや企業など、使い分けているのはなぜ?」「事業開始に向けて、どの時点で資金調達できるようになるのか?」「どのようにして、あれだけ資金調達するまでに周囲を巻き込めたのか?」など、数字に表れない事業化におけるポイントについても、積極的な質問が寄せられました。

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講義のあとは、グループにわかれてのワークショップの時間。

事務局から配布した「事業プランニングシート」「SWOT分析シート」を参考に、グループごとに再エネの事業化にむけた事業の中身について、特徴や弱みなどをすべて洗い出す作業を、ディスカッションを通じて行い、最後に全体で発表・共有の時間をつくりました。

①「川崎市内での市民電力発電所の普及拡大」

 リーダー:川岸卓哉さん

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第二号機をどう設置できるかが課題、強みはボランティアで賛同者が集まってきてくれていること、賃料ゼロでの屋根貸しを期待できる点だが、ボランティアな分、事業上は責任の所在が曖昧な点もある。税制面での優遇や法人格の取得をプラスに考え、原発に頼らない世論も見方になる。反対に、FITの動向や再エネ不要論が出ることが脅威と考えている。

⇒[講評]:人のネットワークが出来上がっていることが頼もしい。再エネは地域の場づくりがベースになる。ぜひ、ネットワークを生かして2号機を実現してほしい。当初は、ボランティアでもよいが、事業はこれで飯を食っていけるかが鍵だし、雇用に結び付くと規模感が出てくる。まず、できることから進めるのも手だが、大風呂敷を広げる手もあり、そのためには今から何が必要か、バックキャストで考えてみることが大事。

②「東京都町田市内での市民電力発電所の立ち上げ」

 リーダー:入澤滋さん

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事業プラン名は、「子どもお年寄りと一緒に発電しよう」に決定。ビジョンは、まず地域で自ら発電して循環させること、その先に持続可能な社会がある。地域課題は、再エネの関心がまだまだ低いこと。多摩は八王子や川崎に比べると、関心がまち全体に広がっていない。高齢化問題で揺れる多摩ニュータウンなどで屋根は豊富(やねルギー)。幼稚園や福祉施設などにも設置して、災害時には非常用電源として、平時には子どもたちの環境教育の場として活用できればよい。試算では、幼稚園20kw/1か所として、地域の30の幼稚園のうち10棟を目標で約200Kw。初期に7000万投資して、売電収入でおよそ12年で回収するのが目標。再エネに対する関心は、SNSや啓発活動を通じて広め出資者を募りたいと考えている。

⇒[講評]:多摩には、団地もたくさんあるが、大学もあるので学生を巻き込む方法もある。新潟では、280名もの方々が参加して、若者からお年寄りまでネットワークができた。投資額の7000万円は、手ごろな数字。いろいろな金融手法で調達できるのではと期待している。

③「たまプラーザでの市民電力発電所の立ち上げ」

 リーダー:梅原昭子さん

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ビジョンは、2050年までに創エネ・省エネを進め、燃料起源のCO2をゼロにする自然再生エネルギーのまちをつくること。地域課題は、有効な場所の確保。仲間づくりはできており、NPO活動から情報発信能力には強みがあるが、啓発のみではアクションにつながらないことから、自分たちで発電事業を考えた。資金確保が課題であり、目標は、屋根貸ソーラーの場所を6か所の大学に確保し、団地のり面などの活用し、青葉区にある農地でのソーラシェアにも広げたい。2014年300Kwからスタートして、600Kwあたりで増資、市民ファンドを立ち上げて、2016年には事業化したいと考えている。

⇒[講評]:600Kwはリアリティのある数字。市民ファンドはコストがかかるので、一定の規模感が必要になる。SNSなどを駆使して、うまくメニュー化できるのではないか。

④「茅ケ崎市内での食品残さ等を使ったバイオマス発」

 リーダー:菅野恒宏さん

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プラン名は、「茅ヶ崎エコプロジェクト」(チェコプロと呼んで!)に決定。家庭から出る一般廃棄物、コンビニ弁当のかす、学校や食品工場から出る残さによるバイオマス発電を立ち上げる。ゴミを宝物に変えて、地域に必要なエネルギーを地域で創りだしたい。売電ビジネスが中心になるが、災害時には、地域に優先的に配電するなど役立てたい。課題は、生ごみの匂い等の発生による発電所の立地。資金計画部分も十分に議論できていない。ランニングコストや発電設備のデータも不明なので、プラント見学を行う予定。メリットは、すでに地域の食品残さの回収ルートや金融機関とのつながりがあることなど。

⇒[講評]:食品残さによるバイオマスは、金融機関がついて秋田で300Kw規模で事業化していると聞く。廃棄物回収は、行政コストを下げることにつながるが、それをどう説得できるか。北海道では、エゾシカの頭数が増えすぎていて、個数管理により約2000頭がそのまま山に捨てられている。この産廃を利用してエゾシカ発電ができないか考えたことがある。

⑤「根府川・片浦地区での発電プロジェクトの立ち上げ」

 リーダー:帰山寧子さん

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プラン名は、「みかん畑と共生できる地域エネルギー」に決定。マイクロ小水力発電や耕作放棄地を有効活用した太陽光など、再エネがパッチワークのように風景の一部になるとよい。地域では、すでに太陽光は認知済、土地もあり賛同者から安価にて借りることができる。耕作放棄地は、置いておくだけで固定資産税かかり、放棄地問題などへの危機感は再エネ事業者にとっては逆に強みである。ソーラーシェアリングは、資者に特産の柑橘類で配当を還元する等、やり方や魅せ方で価値を創造したい。具体的には、段々畑に60kwを目標に初期投資1300万ほどを10年程度で回収できればよい。まずは小さいところから実現して拡げていきたいと考えている。

⇒[講評]:農産品など現物での配当は、モノで配るのは事故もありなかなか難しいし、法律面での課題をクリアする必要がある。代わりに地域振興券を配るなどもある。お金だけではない配当はとても魅力的で、ファンをつくる仕組みとしてもおもしろいのでは。

⑥「横浜・大倉山での発電プロジェクトの立ち上げ」

   リーダー:肥後貴美子さん

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プラン名は「自然エネルギーに自然にひとが集まる大倉山プロジェクト」に決定。再エネによる発電事業と環境教育を地域ぐるみで取り組みたい。地域の商店街との連携やワークショップの開催なども通じて、ソーラシェアの仕組みが広がっていけばよい。情報発信は、学童やNPOなど、高齢者支援グループなどとの連携を考えている。商店街でみつばちを育てようという話が出ているので、そういった活動も巻き込みながら進めて行きたい。

⇒[講評]:規模のあるファイナンスではなく、寄付と御礼(はちみつ)でライトタッチな方法でアイデア次第で様々な仕組みを実現することもできる。期待しています。

⑦「商業施設での官民連携による再エネ普及事業の新アイデア」

 リーダー:水津和幸さん

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ビジョンは、再エネの普及啓発で、発電事業者の方々の拡大をはじめとして、再エネに興味があるひと、なんとなく知っている人などを巻き込み、再エネとはなにかを伝える役割。最終的には、地域で発電事業者が増えて、地域でエネルギーを消費できるとよい。地域資源は、すでに発電事業者の存在していること。さらに、行政の力を借りて、行政連携ができるとよい。当面は民間事業者の負担となるが、将来は地域内のSPC(特別目的会社)を興せるとよいと考えている。

⇒[講評]:再エネを進めていくのは、いろいろな参加の仕方がある。今後、電力自由化にむけて重要なポイントは、「へらす、つくる、つかう」の順。地域で生み出した電気を使い、自由に選択する時代がくるはずである。より広い視点で再エネを含めた魅力あるまちづくりに期待したい。

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最後に、鈴木さんから全体総括を頂きました。

「発電事業が中心で、どのグループの発表も具体的であり、昨年のまちエネ大学よりも一歩前進している印象。地方ではなく都市でできることとは何かを考えてみると、消費者に近い、コミュニティに近い面もある。まずは、太陽光からなど実現、経験していくことも大事ではあるが、事業は持続可能性がなによりも重要。したがって、一定の事業の規模感があることも重要であり、その分リスクも高くなるがそれをどうみんなで知恵を出し合えるのかが問われている。地域での存在感として『あの会社に就職したい!』と思われるような事業体がひとつふたつできていけば、社会は変わってくるはず。苦しくやらずに、未来のビジョンを持ってやっていくことが大事である」

こうして、充実した第2回講座は終了しましたが、最後に次回講師の水上貴央弁護士より宿題が出ました。

  1. 「できること」と「やりたいこと」を分けて考える。その上で、自分たちはどの部分を担うのか?
  2. 自分たちの事業、自分たちの担う部分の「価値」は何か?

この2点について、次回までに各グループでまとめていただくことになります。

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講座終了後は、恒例お待ちかねの懇親会。講師の鈴木さんにもお越しいただき、さらに熱のこもった熱い熱い夜になりました。(了)