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【報告】2015年度開催応募説明会、全国3会場で実施しました

  • 2015.12.21

2015年度まちエネ大学開催応募説明会が、札幌、名古屋、仙台の全国3会場で開催されました。ご来場いただいた皆様、どうもありがとうございました。

説明会は認定NPO法人環境市民理事・下村委津子さんによるナビゲーションで、冒頭まちエネ大学事務局を代表して、株式会社TREE代表取締役・水野雅弘より、まちエネ大学のコンセプト、ならびに過去2カ年の実績についてお話申し上げました。その上で、今年度は全国で最大6カ所の地域に出向いて開催することにより、各地域の様々なステークホルダーにとって、より参加しやすい場にすることができるとともに、地域内における信用・合意形成につながることを目指している旨、説明させていただきました。

その後、全国各地で地域に根差した再エネ事業に取り組む3人のまちエネ大学卒業生が、再エネ事業への挑戦にまつわる体験談を披露しました(*敬称略)。

まちエネ大学卒業生の実践のご紹介

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▼浅輪剛博(せたがや市民エネルギー代表/2013年度東京スクール卒業生)

2013年に1号機として市民からの出資・寄付をもとに、世田谷区内の教会の屋根に太陽光パネルを設置(10Kw)。2号機として東京都内のほかの地域で市民電力を目指す主体と合同で設立した会社を通じて、世田谷区内、山梨、茨城で計5機を今年9月に運転開始(合計150Kw)。2号機では、東京スクール協賛の西武信用金庫が出資するソーシャルファイナンス支援センターから出融資を得る。行政、区内のソーラー事業者とも協力関係を広げている。

👉「1号機を開設したタイミングでまちエネ大学に参加しました。当初予測よりも発電量が上振れしていたため、その利益の使い道について同じグループにいた人たちに相談したところ、再エネに関するワークショップ等を開催したり、次の発電所建設の準備資金にしたりすることなど、アドバイスをいただいた。専門知識だけでなく、自分にはない視点や人とのつながりを得られることが、まちエネ大学のいいところだと思います」

▼仁木佳男(南紀自然エネルギー代表/2013年度和歌山スクール卒業生)

和歌山県串本町内で私募債による設置した1号機は、売電益の一部を地域の環境・子育てNPOに寄付。2号機も私募債+クラウドファンディングを通じて資金調達に挑戦中で、売電益は串本海中公園での子ども向け海のワークショップ開催費用に充てる予定。3号機も計画中で、こちらでは地元金融機関との間で融資交渉が始まっている。

👉「事業計画時は実績がないため様々な障壁があるが、まちエネ大学に参加することによって、信用度アップにつながり、外部の人との交流が生まれ、さらなる機運が高まることやステークホルダー(金融機関や行政)との新たな関わりも生まれた。地域で事業を行う際には、楽しいことをやりながら実施するほうが、推進力が得られると感じている」

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▼藤川まゆみ(NPO法人上田市民エネルギー理事長/2014年度長野スクール卒業生)

市民出資で上田市内の戸建て住宅に太陽光パネルを設置。戸建て住宅のオーナーが屋根の一部を貸し、出資者は売電益を受け取ることができる「相乗りくん」という仕組みを確立した。

👉「屋根オーナーはFITでの売電収入相当分をNPO法人を介して出資者に配分するという形で、『市民信託』と呼んでいる。相乗りだけでなく公共施設等、単純な屋根貸方式もあり、その場合は賃貸借契約を締結して賃料を支払う方式である。出資者への目安としては、10年で約1割、13年で2割の収入が見込めるとしている。出資者同士顔の見えるコミュニティづくりが大切なので、取材等はできるだけ出資者にも一緒に入ってもらうことを心掛けている」

パネルディスカッション

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後半のパネルディスカッション「地域経済自立に向けた持続可能な事業性の確保とその課題」では、地域協働型の再エネ事業の推進に欠かせない自治体や金融の専門家、さらには資源エネルギー庁の担当官を交えて、再エネを地域で取り組む際に直面した課題、その克服に向けたポイントを浮き彫りにしていきました。発言要旨は以下の通り(いずれも敬称略)。

浅輪剛博(せたがや市民エネルギー代表)

👉「ソーシャルファイナンス支援センターの協力があり、銀行への相談資料作りにもアドバイスをいただけたことは、事業化への後押しとなった。ファンドでの資金調達では、特に書類の作成や財務局とのやり取りが素人では非常に難しいため、専門家の支援は不可欠である。地域で再エネ事業を始めようとすると、想いがある人や専門家は必ずいると思う。ただ、事業が進んでいる地域とそうでないところとの差は、コーディネーター(調整役)がいるかいないかの差ではないか。地域再エネ事業のリーダーには、色々な立場の人たちのまとめ役としての資質が必要である」

唐木宏一(ソーシャルファイナンス支援センター理事)

👉「地域再エネ事業において、適格機関投資家等特例業務(いわゆる適特)による資金調達は、『共感』や『親密さ』がベースとなる。一方で、もっと規模を大きくするにはファンドや融資を通じた資金調達となる。外部からの支持を取り付けるに当たっては、事業によってきちんと収入が得られて出資分の返済が見込まれることなど、出資者側の懸念に対してしっかりと回答が出来るよう長期的なガバナンス体制の構築が重要である」

清水優子(世田谷区役所環境総合対策室副参事)

👉「世田谷区では、新たに建設される公共施設等に再エネ設備の導入を進めていたこともあり、既存施設の利用についても検討を行っていた。その中で屋根貸し事業による再エネの導入を進めることとなり、東京市民ソーラーに応募をしていただき、審査の上で採択をした。選定理由としては、事業採算性や通常使用の妨げにならないという基本条件に加えて、市民へのアピールという点から優れていると考えたためである。行政は財政難の状況であるため、行政の立場から、NPOや合同会社が主体的に地域に貢献する形での発電事業を推進してくれることは非常に助かる」

👉「世田谷区で区民にアンケートをとったところ、再生可能エネルギー発電による電気の購入は価格がやや高くても購入したいと回答した人は8万世帯(18%)、同等であれば購入したいと回答した人は60%近くになった。これを受けて、世田谷区は他の自治体と連携することも検討しながらそのニーズに応えたいと考えている。発電事業を検討している方には今後、発電した電力の売り先についても考えていただきたい」

藤川まゆみ(NPO法人上田市民エネルギー理事長)

👉「『やる』という意思決定をすること。大人数で集まっても進まないことはあるので、少人数でも話して進めてやっていくほうがいい。進めていくうちに必要な人材が現れることがある。前に出ると決めることが重要である」

仁木佳男(南紀自然エネルギー代表)

👉「地域再エネ事業の場合、地域の方にどうやって利益を感じてもらうかという点が非常に重要だと実感している」

渡部伸仁(資源エネルギー庁新エネルギー対策課再生可能エネルギー推進室長)

👉「再生可能エネルギーに関する政策は変動するが、2030年のエネルギーミックスのうち、再生可能エネルギーの割合を22~23%を目指す方針は変わらない。一方で、再エネ賦課金という消費者に跳ね返る費用とのバランスを取るための第2段階に入ったものと認識していただきたい」

👉「再生可能エネルギーは地域との関係が不可分である。キーワードは『志』『ビジネス』の2つであり、そのバランスが重要である。『志』があることも必要である一方、『ビジネス』として持続可能な事業でなければならないだろう。浅輪さんと仁木さんの事例は、ビジネスとして資金調達をどのようにするかについて考え、その売電収入で地域に貢献するか、地域で循環させる地域ビジネスモデルになっており、このような取組が今後も各地で拡大すると良いと思う。今年のまちエネ大学は地域の中まで出向いていくので、ぜひ活用をしていただきたい」

エントリーを募集しています!

まちエネ大学事務局では、全国最大6カ所で2016年1月~3月にかけて開講する2015年度まちエネ大学の開催地を募集しています。締め切りは12月22日(火)。開催地は12月中に通知いたします。詳細は開催地応募(http://www.greenpower.ws/6region)のページへ。皆様からのご応募、お待ちしています。